お前の分まで生きよう
―――――そう決めたのに。
一瞬ずきりと痛んだ腕を押さえ、クラウドは患部を見た。
湧き水のように腕から染み出し指を伝うそれは水などでなく黒い膿だ。じくじくと患部が蠢くのを目に映しながら、クラウドは顔を顰める。
気持ち悪い。
……星痕症候群。子供達をはじめ多くの人が続々とその病に罹っている。
デンゼルや他の人が星痕に苦しめられている様を目にしても決して気持ち悪いなどと思わなかったのに。自分を蝕むそれはまるで――
そう、まるでこれまでの過去の罪が具現化したもののような気がしてクラウドは酷く痛んでいた。
巻き込んだ罪。見殺しにした罪。偽った罪。守れなかった罪。……大切な人を死なせた罪。全てが重く、クラウドにとっては一生赦されることのない罪だ。それでも生きなければならなかったのに。
『お前が俺の生きた証』
ザックスはそう言ってくれた。
『クラウド』
聞こえた、エアリスの声。――彼女は最期まで微笑んでくれた。
だからこそ生きようと決めたのに。ティファがいて、仲間がいてくれるのに。
クラウドはその身に受けた星痕が自分を何処に運ぼうとしているか知っていた。
全てが終わりまた始まる場所、ライフストリーム。
其処が大切な人の混じる安らぎの地であろうとも、クラウドに自殺願望など無かった。
自ら命を絶つなどそれこそが赦されない罪だから。けれど星痕は自分を死に追いやろうとしている。あらゆる罪が自分に死ねと命じている気がした。
治療法が無いことで、余計にクラウドは自分がどうすれば良いのか分からなくなった。
だから家を出た。星痕は感染の可能性も考えられているから、クラウドの発症を知ればデンゼルはきっと自分を責めるし、ティファやマリンも心配するだろう。
それが少し重い。
彼らは新たな自分の罪になるかもしれないから。
守ろうと決めたのに守れない。自分は死んでしまうのだ。自分の死は彼らを傷付けるだろうか。それはまた新たな罪と言えるだろう。
(それに―――)
自分が死ねばザックスの託してくれた想いまで一緒に消えてしまう。ザックスはクラウドを守り、クラウドに残してくれたのだから。
クラウドは多分、自分は死にたくないのだと思った。
ティファ達を守れないのが怖い、ザックスの残した想いを失うのが怖い。
しかし治療法は無いのだ。
星痕が死を呼ぶ。生きようとするクラウドを死へと連れ去る。
過去に犯した罪はクラウドを赦すまいとしているのではないだろうか。
生きるべきか死ぬべきか。死と生、過去の罪と新たな罪の板挟みにクラウドは苦しめられている。
クラウドはそっと墓標の柄に触れた。
「……ザックス……。俺は、生きたいと思ってるんだよな?」
最早分からなくなっていく。死にたくない、でも生きたいと思っているのか?
お前の分まで生きたい。
でもお前の側に行きたい。
いっそのことお前が決めてくれ、と。
クラウドは地に真っ直ぐ突き刺さるぼろぼろのバスターソードを抱き締めて泣いた。