「……何で貰ったんだ」
むすりと黙り込んでいたかと思えば恨みがましい視線を向けてくる。
不機嫌なスコールに敢えて軽い口調で返してみた。
「何で貰わなかったんだ?」
「……」
沈黙するスコールを更にからかいたい衝動に駆られわざと「ああそうか」と思い当たったような振りをする。
「お前甘いの苦手だもんな」
要するにこの口論(のようなもの)の原因は、バレンタインのチョコレートだ。
有り難いことにこの日プレゼントを持って来てくれた女の子の数は多かったのだが、
問題はそのプレゼントを、スコールは全て断り俺は全て受け取ったこと。
決まった相手がいるのに「何で貰ったんだ」と言う訳だ。
正直義理のようなチョコレートばかりだと思うのに、そんなことで拗ねるなんて存外子供っぽい。
「じゃああんたは、俺が甘い物が苦手だから全部断ったと思っているのか?」
「違うのか?」
「違う! 俺はあんたがいるからと思って……」
言い掛けてスコールは慌てて口を噤む。
挑発をしたのは此方とは言え、予想外の台詞に思わず頬が緩んだ。
「ごめん、嘘だ。お前の気持ちは分かってるよ」
じゃあ何で貰うんだと言いたげなスコールに、これ言ったら怒るだろうなと思いつつも言葉を続ける。
「俺が貰ったのは、半分は好意を無駄にしたくなかったって気持ちだけど、半分はただスコールを
からかいたかっただけなんだ」
「………」
案の定スコールの顔が暗くなる。
(何て酷いヤツだ)
と心の声が聞こえ、「今酷い奴だって思っただろ」と冗談交じりに指摘すれば、彼は言い当てられて
更にムッとしたようだった。
(そろそろヤバいかな)
「スコール」
なるべく猫撫で声を作りソファの隣でじっと黙り込んでいるスコールとの距離を詰めた。
少し身を乗り出すような体勢で顔を覗き込むと、何故だかスコールの顔に警戒が浮かぶ。
その固さを解かせるようにゆっくりと言った。
「今日はお前の部屋で寝てもいいか?」
「………」
互いに忙しくて暫く夜を別に過ごしていたことも、もしかしたらスコールの不満の一因かもしれない。
じっと見つめていれば長い間の後
「あ、ああ」
と少し焦ったような声が返って来て面白い。
(愛されてるなぁ俺)
(さっきまであんなに不機嫌だったのに)
そんなスコールを見るのが、何だかとても楽しかった。