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  『解放の礎』 なるサイトの存在を知った。

  松田が偶然見つけたそのHP。 携帯に送られてきたURLに自宅のパソコンからアクセスする。
  わざわざ家族のいるリビングでノートパソコンを開いたのは、恐れからだろうか。
  何が書かれているか分からないサイト……、いや、松田から概要は 聞いている。
  だからこそ怖かった。胸の内、ずっと奥底に蟠って いるものの正体を俺は知っているからだ。
  『解放の礎』
  冒頭にはこうある。
“此処はキラからの 解放を待ち望んでいた者達の集いである”
  ENTERをクリックする と、そこは巨大な掲示板になっていた。
  といってもよく見られる ような荒れ果てた雰囲気の無い、物静かな掲示板だ。
   余す所なく多量の文字が真面目な文章で綴られている。
   中にはもういないキラへの憎しみ、悪態が過激な言葉で表されているものもあるが、 そう多くない。
  殺された犯罪者の遺族が殆どだった。
「一家心中を避ける為仕方なく盗みを働いた……か」
  自分の父親が犯罪者になった訳まで詳細に綴った文章を書い たのはまだ小学生の女の子だ。
  随分 幼い時に父親を失ったようだ。……キラによって。
  リビングのソファに座って妻と話す娘の姿をちらりと見た。
  この子だって、もしかしたらこの 少女と同じようにこのサイトに書き込む立場になっていたかもしれない。
  俺は改めて キラ捜査に取り組んでいた頃を 思い出し生きていることに胸を撫で下ろす。
  命を失った犠牲者は 多いが俺はこうして生きている。
   息を吐いてスクロールする。
  三度ほど画面を切り替えた時だろう か。
  ―――――――ある一文が目に飛び込ん できた。

“ありがとうL”

  その文字を目にした瞬間息が止まったような気が――――、
  ……気の緩んでいた所に冷水を掛けられたように心臓がびくりと 跳ね上がるのを俺は感じた。
  反射的に喉を押さえ深呼吸する。
  画面に目を走らせる。

“ キラのいない世界を取り戻してくれて有難うL。
  あの頃は毎日息苦しく生きていました。
  これからもたくさんの人を救ってください ”

(違う)
  俺は叫びたかった。
  解決したのは俺達だ。ニアに疎まれてもキラを追い続けた俺達 だ。
  キラを捕らえたのはニアでも、俺たちはちゃんと報われた 筈だ。
  時間が掛かってもキラに近付いていた。
   時間も仲間も全てを犠牲にして――
  あまりにも多くの時間が 掛かり過ぎた。
  次長の息子は俺達を騙し続けた。
   すぐ側で何食わぬ顔をして全て思い通りに操りながら、その心中はどれ程喜悦に 満ちていただろう。
  疑うことすらしない俺達をどれ程嘲笑って いただろう。
  ただ一人、竜崎だけが彼を――――
『ノートの検証を』
  死の直前、ノートのルールを疑い検証を 唱えたL。
  もしもあの後ノートの検証をしていたら。
  第二 のキラ弥を拘束していたら。
  夜神月を監視していたら。
   竜崎のやり方に反感を持たなければ、
  ――――――もっと早く 事件は解決していただろうか?
  もっと少ない犠牲で済んだだろ うか。
  次長は死ななかっただろうか。
   キラであった彼の息子も死ななかっただろうか。

「違う」
   失った時間は取り戻せない。
  俺達は間違っていなかった。
   全てが仕方なかった。

(何が違うというのだろう?)

   俺は俺を正当化してばかりだ。
   俺は自分の命が此処にあることを喜んでいる。
   天才と呼ばれたあの男でさえ越えられなかった死線を越え生きていることを当然の ように受け入れている。
  あの男がこれまで何を成し遂げてきたか を見ないようにしている。
  誰も指摘しないから気付かない振りを していた。
  仲間全員で間違っていたからそれでも正しかったと 思おうとしている。
  俺は汚い。
  俺が かつて非難したあの竜崎に比べ、俺は自分が途方も無く汚い人間なのだと、
   思いたくもないのに思えてくる。

「お父さん?……どうしたの」
   あの頃より大きくなった娘が俺の顔を覗き込み目を丸くした。
   遮断するように額を押さえる。
    手の平に後悔の涙が 付いた。

    謝るには遅すぎるのに









俺=相沢が一番しっくりくる。原作設定。後悔してよほんと。
キラ信者がいるならL信者もいてくれ。