「ッ!」
不意に掴まれた腕の痛みに思わず顔が歪んだ。
「こっちへ」
真っ直ぐの視線と共に一言そう言うと、クラウドは俺の手を引っ張ってさっさと歩き出す。
掴む箇所をすぐに痛む患部からずらしてくれたことを見るに、怪我の存在に確実に気付いているのだろう。
しまったと舌打ちしたくなったが彼の手は振り解けずずるずると引き摺られていく。
わざわざ他の者達の姿が見えない場所へ連れて行ってくれるのは有り難い彼なりの配慮だ。
「打撲か?」
少し離れた場所に移動するや否やクラウドは問い掛けてきた。
「……ああ。よく分かったな」
仕方なく腰を下ろして上着を脱ぐと、クラウドは横に膝をつきそっと俺の腕を持ち上げた。
紫色の患部に視線を注ぐ彼の眉が僅かに顰められるのが見える。
と思うと彼は流れるような仕草で其処に手を翳し、力を行使し始めた。
「微妙に庇ってたから。何故回復魔法を使わなかった?」
「……」
自分の腕に集まる治癒の光を見つめながらどう答えようか迷う。
別にずっと放置するつもりだったわけではない。
ただ、怪我を負った直後に仲間と合流する羽目になり、外に出血しているわけでもない大したこと無い怪我をちまちま回復する所を見られたくなかっただけだ。
……のだが、そんなことはとても言えなかった。
「……」
だんまりを決め込むことにしてみるが、どうやら顔に出てしまっていたらしい。
(というよりもクラウドが鋭い気がする)
クラウドは呆れたように溜息を吐いた。
「獅子のプライドってのも……」
厄介なものだな、と彼の心の声が聞こえた気がして非常に居心地が悪くなる。
身じろぎしながら言い訳を探した。
「あんたのイミテーションにやられたんだ」
結局そんな悪態を吐くことになった。
これは嘘ではない事実だ。が、
「それはすまなかったな」
またも肩を竦めて溜息交じりに返されてしまう。
きっとバツの悪い表情をしているのであろう俺を、だがクラウドはそれ以上追い詰めなかった。
「“俺”は苦手か?」
場の空気を払底させるように柔らかな声でクラウドが言った。
「別に。……ジタンとかの方がチョロチョロしてうざい」
クラウドのイミテーションに怪我をさせられたのは、戦闘中吹き飛ばされた時受身に失敗して岩に腕を強打したからだ。
どんなにクラウドに似せた姿をしていても敵は敵。名誉の為に述べておくが、そんなことで戦いに躊躇ったわけでは決して無い。
「うざいって……」
俺の口から出た棘にクラウドは苦笑した。
「……あんたは」
「ん?」
「あんたは、本物 だけが厄介だ」
――俺と似ているようで、似ていない。
一人が好きなのにお節介で。仲間のことを気遣っていて。
(……誰にでも、優しくする)
痣のあった腕はいつの間にか完全に痛みが消えていた。
すっと腕を引いてみると、クラウドも治癒が終わったことに気付いたのか翳していた手を離した。
そして訝しげに首を傾げる。
「そんなに厄介かな?」
自覚無しな所が一番そうなのだと。
他の連中を代表して言ってやりたい思いに駆られた。