First Memory





  モデオヘイムの任務で一緒になったソルジャー。
  それが1stのザックスだった。

  スラムでヘリに乗り込んで間もなく眠り込んでしまった彼に、ツォンが呆れてい たのを覚えている。 俺もまた1stの印象とはかけ離れたその暢気な雰囲気に最初は意外さを感じた けれど、モデオ渓谷上空に差し掛かった頃突如がばりと目を開けたその人が叫んだ 「何かに捕まれ!」という言葉が、ヘリに突っ込んでくる怪鳥の存在に逸早く気付いてのものだったことを知って、 さすがだと思った。俺達は、タークスでさえ、その接近に気付いていなかったから。
  その任務の少し前にソルジャーザックスのことは耳にしていた。
  陽気で仲間思いの奴、と実力だけでなく人望の面でも優れたソルジャーであると。渓谷にヘリが墜落した後でも「おーい兵隊さん」なんて元気な明るい声でこっちを 呼ぶ姿は噂通りに見えた。 力があるのに全然飾らない。彼のことを何も知らなくても悪い印象なんてまず抱かないだろう。
  渓谷を進む道でもモンスターに遭遇する度にザックスのおどけた調子は変わらず 、実力も変わらずで、楽しい人だなと思った。
  話に聞いたように誰にでも気さくな人なんだろうか。
  話したい、と思った。もっと近付いてみたいって。
  雪に足を捕られないよう、置いて行かれないように力を入れて進む。
  近くにいれば、もしかしたら何気なく声を掛けてくれるかもしれない。
  俺はやっぱりその時も臆病だった。 だけど誰にでも気兼ねなく接することの出来るこの人なら、俺から話し掛けて も大丈夫かもしれない。そんな風に考えてもいた。
  上官にあたる彼に、何か話し掛けるきっかけはないかと必死に探していた。
  でも、俺には「雪が凄い」とか「やっぱりソルジャーは強いんだ」 とかつまらない話題しか思い浮かばなくて、共通点といえばさっき彼が口にしていた「自分は田舎出身だ」ということくらい しか見つからない。
  そんなつまらない俺への自己嫌悪を振り払うように足を速めた。
  隣にいる彼の視界に僅かでも入るよう願いながら。
  そうしたら
「お前、なかなかやるな」
  声を、
  掛けてくれて。
  斜め後ろからのザックスのその声に止まりそうになった足を何とか歩調を緩め るだけに留めた。
  思いがけず与えてくれた機会を逃したくないという思いから気が急いて、俺の 口から飛び出したのは結局「俺も田舎の出なんだ」なんて言葉。
  彼への返答として今のは少し変な返し方だったかもしれないし、敬語にするのも忘 れてマズイと思ったのは一瞬だけ。彼は全く気にした様子もなく俺の故郷のことを聞いてくれて、俺も彼の故郷が ゴンガガだと知った。
  いかにも田舎であることを表しているようなその名前に笑って、そもそも魔晄 炉の存在が田舎なんだよなーって笑って。
  取り留めのない話なのに、それだけで凄く楽しかった。
  こんなに柔らかく当たり前のように受け入れてくれる人がいて嬉しかった。
「喜べツォン、俺と――」
  ザックスがこっちを向いて俺を促す。
  ごく自然に
「クラウド」
  マスクを脱いだ。

  それは遠い日の、もう二度と忘れたくない最初の記憶。