秘め事





  いつもの如く肌に華散らせようとした土方を、斎藤の手がそっと押し止めた。
「明日、皆の面前で松本先生の診察があります故……」
「……そうだったな」
  斎藤の言葉に完全に失念していたといった顔を見せた土方は、肩口に吸い付こうとしていた 唇から急遽舌を出して這わせるに止める。
  体中に口付けて痕を付けて――それが今宵は出来ず、されない。
  今宵の情事は互いに物足りぬものになるだろうなと、斎藤は少しもどかしい。
  当然土方もそう考えることを予想したのだが、それは土方という男を甘く見たものだと直ぐに 気付かされた。
「なら、先生が診ねぇとこに付けるまでだ」
  いけしゃあしゃあと述べて下肢の方へ顔を近付けていく土方を見下ろしながら斎藤が感じたのは
  こんな些細なことで一々その性格に惹かれてしまうのは何故か。