「好きだよ」
布団の上で身を起こした総司が不意に体を抱き締めてきた。
食が細まり刀を振るえないせいで前より肉が落ちたように思う。
心もまた体に倣い衰弱しているのか、総司の声は弱々しかった。
「……総司」
迷いを感じながら驚くほど頼りない背に腕を回した。
総司に同じだけの心をやることが出来たならどんなに良かっただろう。
総司だけが情愛を向ける相手だったならどんなに。
総司は俺を見つめ俺は副長を見る。だがあの人は俺を見てはいないだろう。
いつまでもこんなことを続けるのは
「不毛だと思ってる?」
総司が心を読んだように言った。
「ああ」
「でも、君だって分かっている筈だよ。どんなに不毛でも無意味でも……想う気持ちは止められない」
総司が笑う。悟ったようなこの顔が好きだ。
そして同時にこの男はどこまで悟っているのかと物寂しくなる。
畳の上で剣を握らずに迎える死などこの男には相応しくないのに、それすらいつか受け入れてしまいそうに見えた。
(馬鹿なことを)
そんなことを考えるのは総司を愚弄するに等しい。
今日の自分は感傷的すぎる、と雑念を振り払うように腰を上げた。
すかさず総司が
「また来てね」
と甘えた声を出す。
総司を一人置き去りにして、それでも俺は副長と行かねばならない。
今出来ることは、総司がいつでも戻れるように新選組を守ること。
「また来る」
花散る季節が来る前に、きっとまた此の場所に。