1 : どうしたらいいか、分からない
「アーシェ」
名前を呼ばれて抱き締められた。
「お前が好きだ」
胸が熱くなる。
体中が熱くて、けれど温かくて心地良くて。
(駄目……)
―――信じては駄目。
流されては駄目。
この背中に腕を回しては駄目。
頭が警鐘を鳴らすのに、心が囚われて動けない。
「バルフレア、私……」
どうしたらいいか、分からない。
2 : 何度も繰り返す「大嫌い」、たった一度も「好き」は言えない
(貴方なんて嫌いよ)
繰り返す。
(大嫌い)
いつだって見透かすように見つめてくる貴方。
私の心の内など知らないくせに、まるで解ったようなことを言う。
「大嫌い」
面と向かってそう言ってやるのに、
「ああそうかい」
浮かべるのは頬を緩めた可笑しそうな笑み。
ねえどうして?
解っているの?
本当に伝えたいのは、正反対の言葉だって。
(好き)
たった一度も「好き」は言えない。
3 : 一人きりの空間で、風に乗せて呟く事は出来るのに、
もう、気付いてる。
この気持ちは隠すことは出来ても、抑え込めるものじゃないって。
「陛下はよくそうして窓の外を御覧になっていますね。空がお好きですか?」
侍女がにこにこしながら問い掛けてきた。
周囲に気付かれる程、そんなによく空を見ていただろうか?
(気付けばいつも私は貴方を想っているのね)
「バルフレア……」
侍女の去った部屋で、貴方の名をそっと呟く。
さあっと涼やかな風が吹いた。
この風は私の声を運び、貴方の元へ行くのだろうか。
遠い遠い、私の行けない場所にいる貴方の元へ。
(逢いたい)
一人きりの空間で、風に乗せて呟く事は出来るのに、
4 : 気付かれないようにするので、精一杯。
嫉妬。
醜い感情。
感じたことの無かった想い。
ラスラの隣では、いつだって安心していた。
傍にいるのは互いだけだと分かっていたから。
(私だけを見ていて)
こんな苛立ち、こんな焦燥、知らなかった。
まるで飢えているみたいで、酷い自己嫌悪。
(我儘で勝手だわ)
自分に腹が立つのに、それだけじゃない。
私は、彼に怒っている? それとも、別の誰か?
何処かの街で、彼に微笑む、私の知らない女性達?
「どうした、アーシェ?」
(こんな気持ち知られたくない)
「何でもないわ」
首を振って、気付かれないようにするので精一杯。
5 : 胸に想いだけは溢れているのに
気持ちを伝えたい相手が隣にいなくても
聞いて欲しい人が傍にいなくても
それでも好きな人がいることはとても、とても幸せなこと。
そんな風にシンプルに考えて満足していれば良かった。
大切に想うこと、優しさを持つこと、相手を尊重すること。
人間としても女王としても常に心掛けていなければならないことを、
どうして忘れてしまいそうになる?
心が嫉妬に支配されたら私達の関係は壊れてしまうって、
いつだって恐れているのに。
けれど限界。抑えられない。
やり場の無い綺麗な想いは、貪欲な嫉妬へ。
純粋に好きという、
この胸に想いだけは溢れているのに
6 : 本当はそんな事が言いたいんじゃなかった
7 : どうして、みんな、うまくいってくれないの
8 : ………すき、だよ
9 : 初めて見たよ、君の、そんな顔
10 : 意地っ張りなんて、言われなくても分かってる
素直になれない10のお題
配布元 Arcadia.様