斎藤が死んだ。
会津残留の一隊は全滅した間違いない、と。土方が聞かされたのは仙台でのことだった。
「そうか」
短く答えるは口先だけ。
強い男
無敵の男
死なない男
ああ、副長としての己はそんな無双の印象を斎藤に持っていたと今更ながら知る。
新選組の名を負う者として当然至極の公的な評価。
組に必要かそうでないかで言えばあの男は間違い無く前者だった。
惜しい男を失くした。
一言、そう思って、終い。
そんな風に割り切れるだけの存在ならどんなに良かったか。
「ガセだ」
皆を締め出した部屋で喉の奥から漏れ出た言葉はあまりに弱く
「死ぬ筈がねぇ」
やり場の無い怒りに満ちていた。
あいつは死ぬまいと、そう思っていたから会津で離した。
奴は奴で成すべきことを成し、生き抜いてまた此処に戻る筈だと、そう暗黙の内で理解して
いたから。
だというのに死んだとは一体どういう冗談なのか。
(死なねェよ。生きてるんだろ? 斎藤)
そうでなければ許さない。
現実から目を背ける弱さなど知るものか。
土方は首を振る。全ての雑念を追い払って思考を閉じる。
斎藤という一人の隊士への想いなど、今は―――。