「花言葉を教えてあげようか」
色とりどりの花が積まれたワゴンをきょろりと覗き込むデンゼルに、エッジの外から来たという花売りが言った。
「花言葉?」
「そう。それぞれの花には意味があってね、贈る相手に対してその意味を伝えるんだよ」
「……例えば?」
「例えばねーぇ、赤のバラは“愛情”を意味する。白バラなら“尊敬”。ピンクだったら“上品”で、黄色のバラなら“嫉妬”だよ」
「……しっと……」
「坊やにはまだ早い感情かな?」
花売りがからかうように笑うと、デンゼルは首を振った。
(坊やじゃない)
子供扱いにムッとした少年に花売りはまた笑ってみせると、赤いバラをいくつか取り出した。
「プレゼントなら赤がいいと思うよ。ちょっとしか無くても映えるし、“愛情”が伝わりやすいもの」
デンゼルはクラウドの顔を思い浮かべた。
クラウドに対して伝えたいこと――感謝と、憧れと、好きという気持ち。
けれどクラウドが仕事帰りにたまに持って帰る花は、皆淡い色のものばかりだった気がする。
クラウドは赤い大輪の花は好きだろうか。
クラウドなら赤よりも青の方が似合う気がする。
少しだけ気になってデンゼルは訊ねてみた。
「ねえお姉さん、青いバラはないの?」
「青いバラ? うーん……」
花売りは腕を組んで少し困った顔をした。
「以前は人工的に作られたのがあったんだけどね、今はもう無いんだ。……天然では無かった色のバラだから、“神の祝福”とか
“奇跡”なんて花言葉が付いてたんだけど」
「“奇跡”……か」
デンゼルが呟くと、花売りはふっと息を吐いて街を見渡した。
「こんなご時世こそ街が青バラでいっぱいになればいいのにね」
青バラで一杯にして、悲しみと絶望に沈んだ人達が奇跡を信じられるように。
デンゼルは頷いて、それからはっとした顔をして真っ直ぐ花売りを見上げた。
「お姉さん、おれ赤いバラを買うよ。青いバラは、もうあの人に貰ったから」
――クラウドという人に奇跡を貰った。
最高の出会いという奇跡。絶望からの救いという祝福。
クラウドに青バラは良く似合う。
だからこそデンゼルは赤でいい。
返したい想いは綺麗な赤で、伝えたい気持ちはとても強い、愛情だから。
「オーケー。メッセージカードは何て書く?」
(そんなの決まってるよ)
「いつもありがとう。大好きだよ」