「好きになっちゃった」

  向き合った女の子に告白のように告げられて、デンゼルは内心「またか」と溜息を吐いた。
  これで友達の女の子は三人目、大人の女性を入れたら、何人目だろう。
「おっ」
  屋台での大胆な告白に、小さな恋が実るのかと野次馬が――店主のジョニーが身を乗り出した。ところが――
「クラウドのこと」
  続いた言葉に、ジョニーはずるりと足を滑らせがくっと背を打たれたように項垂れた。
「……またかい……」
  打ちのめされた地を這う低い声でジョニーが呟く。
  ……そう、まただ。あの男はモテる。
  見れば今あのツンツン頭への想いを告白した目の前の女の子は、長いストレートの栗色の髪の、 実に可愛い女の子ではないか。
  無論ジョニーに妙な趣味は無いので只の子供としか見ていないが、これがあと六、七年したらさぞや綺麗になる だろうと思わせる子だ。
  まったく、どうしてあの男の周りには綺麗所が揃うのか。
(くそぅ……)
  ジョニーは歯噛みしながら嘆くように首を振った。
「おいおいお嬢ちゃん、止めとけよ。アイツは確かにほんのちょっとばかしいい顔してるかもしれないけどさ、男は顔じゃねぇって。アイツってば根暗だしつまんないし話題も少ないし、」
「! うるさい」
  ベシッと痛そうな音がして、悪口に乗り出していた頭が叩かれた。
  クラウドを根暗と言われたデンゼルが腹を立てて殴ったのだ。
  庇うようなその態度にジョニーがなんだよ、と口を尖らせる。
「ほんとのことじゃねぇか」
「そんなことない! クラウドの悪口言うな」
「だってよ、」
「うるさい」
  大人気なく言い募るジョニーと、膨れてあっという間に臨戦態勢のデンゼル。
  自分の恋心を打ち明ける大事なシーンが子供染みた喧嘩の場面に取って代わられてしまい、 デンゼルより一つだけ年上の女の子ははあと呆れた溜息を吐いた。
「やっぱりダメねぇ、子供は」
「え?」
  その子供の口から出た子供らしからぬ言葉に一人の少年と大の大人は口論を中断して振り返る。
「いーい?」
  教師が生徒に言い聞かせるように、女の子がずんと立ち上がって腰に手を当てた。
  それだけで妙な迫力を感じて、デンゼルもジョニーも顎を引く。
  ティファにしろマリンにしろ女の人のその仕草は、何故だか酷く威圧的である。
  気圧された二人は黙り込む。
  すると少女は一度大きく息を吸い込んで、それから一息に言った。
「ジョニー、他の男のかちを下げて自分が上に立とうなんてそれこそつまんない男のすることよ!
それからデンゼル、クラウドはそんなすぐカッカしないの。もっと広い心をもたないとクラウドみたいになれないよ!」
「!!! ……」
「……!!!」
  ガーン、と頭に岩でもぶつけられたようなショックに、二人は暫く石になった。
  石化した二人に構わずに、女の子は言いたいことは言ったとばかりにすっきりした顔で腕を組み、それから ふうと、何処か儚げに息を吐く。
「クラウドに欠点があるとしたら……」
「あ、あるとしたら?」
  自分より遥かに小さな少女に精神的ダメージを与えられたジョニーは、それでも何とかクラウドの欠点という言葉に 反応して訊き返した。
  が、少女はそんなジョニーを更に白い目で見て、
「……自分で考えてよねっ」
  結局答えを教えることなく、さっさとその場を後にした。
  小走りに駆けながら、恋する少女は年上の想い人を頭に浮かべていた。
  クラウド大好き!
  そう言っても戸惑ったように困ったように「ありがとう」としか返さない。
  分かってないのよね、
  その困った顔も好きなんだけど。
(クラウド、鈍いんだもん)
  考えていたら会いたくなって、おませな少女はにこにこと笑顔を撒き散らしながらその足でセブンスヘブンへと駆けて 行った。
  ――― 一方、言うだけ言われて置いてけぼりのデンゼルとジョニーは。
「女の子って酷いよな」
「うん」
  そんな会話を交わしながらも、悲しいかな性別・女からのダメージには慣れて打たれ強くなってしまったらしい、 既に回復したジョニーと、
(心の広い男になるんだ)
  新たな決意を胸にしたデンゼルであった。










女の子に結婚して!とか言われたらクラウド困るだろうなー。