もう何度トラップを解除しただろう。
豪華な内装の割りに細く狭い通路、幾つものトラップ、さすがに気が滅入ってくる。
これを仕掛けた人間は心底意地が悪く自分の腕に絶対の自信を持った傲岸不遜な人物に違いない。
私をこの牢獄で自由に歩かせながら、その精神力がいつ果てるかを何処かでじっと観察しているのだ。
ハァ……
「どうしました
さん」
端末から声がした。
無意識に怒気と疲労の滲んだ溜息を零してしまっていたらしい。
それに気付いたLが声を掛けてきたのだ。
(L……)
そう、L。
世界の切り札と
呼ばれるあの名探偵と、私は今行動を共にしている。
と言っても実際に彼が
この場にいるわけでなく、正確には彼の声と、だ。
まさかこんな形で彼に接触出来るなんて思わなかったけれど、
今此処で彼が力を貸してくれていることは私にとって
大きな励みになっている。
一騎当千。まさにLはそれで、
どんな爆弾処理班よりも力強い味方を得たような気持ちに
させてくれた。
彼はトラップ解除にも精通していた。
「いえ、何でもありません」
FBIとして
まだ新米でも彼の足手纏いにはなりたくない。
彼が本心で私をどのように見ているかは兎も角、彼の期待に応えたい。
不安と疲れを振り払うように首を振った。
「この状況、辛いでしょうね。水分や糖分の補給も儘ならず常に
用心しなければならない」
出来るだけ感情を消した声でL
に答えたつもりだったが、彼には見破られていた。
喉の乾きを覚えながら緊張状態を持続させなければならないこの
状態を、キツイ、と思っていたこと。
でも
「私、負けたくないんです。命を落とす以上にこんな卑劣な犯人に屈したく
ない」
「はい」
「それに、みっともないところを見せたくないんです。この事件を仕組ん
だ人間にも、Lにも。
……
私は貴方のことを尊敬していますから」
「………」
彼の解決してきた事件の数は
無数。事件を選り好みする
傲慢な人間だとLを非難する声もあるが、私はそう思わない。
大事なのは結果。功績だ。
彼に救われた
人間は数知れない。
今だって。
「今も、貴方がいて
くれなかったら私はきっともっと追い詰められていた
と思います。だから、」
「
さん」
Lが言葉を遮った。
「あなたは優秀な女性で
す。この先何があっても私はあなたをみっともない
と思わないでしょう。
リラックスしていきましょう。用心しつつ」
そんなLの言い方に、こんな状況下にも
関わらず不思議と笑みが零れた。
「用心してリラックス、ですか?」
「はい。あなたは一人で警戒
しなくていいんです。
私がいます。そこにいなくても私があなたに付いてい
ますから」
「L……」
「一緒に乗り切りましょう。あなたなら大丈
夫です」
タイムリミットのある
このゲーム。罠だらけの牢獄から脱出する時間は一秒も無駄にするわけにい
かない。
本当はこの会話の時間さえ
惜しいかもしれない。
けれどこんな風に言って貰えたら―――、
「……ありがとう。リラックス出来そう
です」
苛立ち、不安、焦燥、全部霧散していってくれそうだ。
彼がいてくれて、本当に良かった。
「では行きましょう」
Lが促すその声に導かれ、私は次の扉を開けた。
螺旋萌え。