脇役の日記





[μ]-εYλ 0008/    /


今日俺は女神を見た。

紫のドレスに身を包み淑やかに歩く長い金髪の美しい女。
天使? いや、彼女はまるで女神のよう。
俺は一瞬で心を奪われた。

彼女はこの爛れた歓楽街には似合わない上品な顔立ちをしていた。
どうしてこんな女が此処に?
考えて、すぐに思い当たる。
売られてきたのか……。

俺は女の身の上を想像した。

きっとプレートの上で何不自由なく暮らしていた良い所のお嬢さんだった彼女は、 突然の両親の死によって財産の何もかもを失ってしまったのだろう。
その美しい容貌に目を付けた借金取りは彼女をこの六番街に連れてきて売り飛ばした。
なす術なく、彼女は泣く泣くこの街で身を売ることを余儀なくされたのだ。
一緒にいる赤いドレスの女もまた似たような境遇かもしれない。

かわいそうに。俺はとても悲しくなった。

不安なのか戸惑ったように遅れがちになる金髪の美女の手を、赤いドレスの女が引く。
覚悟の決まらない彼女を促しているのだ。
彼女は憂いを帯びた表情で赤いドレスの女に何かを言った。
『待って、まだ覚悟が決まらないの』
『だめよ。気持ちを強くもって』
声は聞こえないが、多分そんな会話をしていたんだと思う。
やがて二人はコルネオの屋敷へと入っていった。

ああ、コルネオか。忌まわしい、コルネオの屋敷。
彼女がこれからどんな目に合うのかなんて明白だ。
あのチビハゲにあの美女は穢されてしまうのか……!
金の髪の女神……ごめんよ、君を助けてあげられなくて。
どうせ穢されてしまうならいっそ俺が君の純白の翼を折ってあげたかった……!

俺は自分の無力さを恨む。
例えば俺がどんな大剣をも振り回せるような英雄なら、悪を切り裂いて囚われの女神を助けることができるのに!

六番街の一介の客引きにすぎない俺は、この街のドンに刃向かうことは決して出来ないのだ。
ああ、なんて無力な俺……。

……でも待てよ?
ドンの相手が済めば彼女は蜜蜂の館に送られるんだろうか?

そうしたら、絶対に毎日通ってやろう。
そんな金今は無いけど、君の為に死ぬ気で稼ぐよ。
そうしていつか君を身請けして救ってあげるんだ。

願わくばあの美しい女神がドンの一生の花嫁なんかにされませんように。







かの有名な女装イベント。女装クラウドに男が群がってくるシーンは笑いました。