甘い毒





「ロンさーんっ。ロンさんの新しい銃のことで夏彦さんが用あるみたいなんスけどー」
  雪がいつもの調子でロンの部屋をノックし返答を待たず無遠慮にドアを開くと、中から小さな 息遣いが聞こえてきた。
「……っは、…」
  こうして押し殺した少女の喘ぎに遭遇したことは何度かある。
  その度にぞくりと高揚した気分になることは、多分気づかれているだろうがロンには内緒だ。
「ロンさーん」
  ベッドに近付きながら雪がもう一度声を掛けると、恐らく繋げたままのロンがんー?と気怠げに返してきた。
  反して少女、七海の方はびくりと肩を揺らし「やっ」と小さく声を上げる。
「あ、今の感じた?」
  情事の中割り込んできた別の男の存在に怯えただけの七海に見当違いの言葉を掛けるロンは、男の目から見ても やはり酷い男で、雪はまたぞくりと昂ぶった。
  羨ましい。自分もああして好き勝手に可愛い子を虐めたい。
  そんな雪の陶酔した眼差しに気付いたのだろう、ロンはまた彼女にとってとんでもないことを言い出した。
「雪、興奮してるねぇ。なんなら君も一緒に遊ぶ?」
「ぇ……っ」
  声を上げたのは七海だ。
「ええっいいんですかぁ!?」
  それを掻き消すように雪は大仰に飛び跳ねる。
「うんいいよ。いいよね? 七海」
  上から覗き込んで七海に訊ねながら、ロンはゆっくりと腰を動かす。
  円を描くようなその動きに、七海の目から一筋涙が零れた。
  彼の玩具になることを了承した日から彼女は何も言えなかった。
「んじゃ、遠慮なく」
  帽子を脱ぎ捨て前を寛げながらベッドに乗ると、三人分の重みを受けたそれは彼女の心のように軋んだ音を立てた。
  ロンは自身を抜き彼女の背後に回って雪に場所を譲る。
  後ろから小振りな胸を弄びながら、「どうぞ〜」とどうでも良さそうに雪を促した。
  本当に訳の分からない人だと思う。
  抱いた回数とか普段の扱い方から、ロンが彼女をそれなりに大切にしているのは分かる。
  なのに他の男にあっさりとこんなことをさせる。
(この子も……)
  何故こんな男にここまで従順になれるのか、全く訳が分からない。
“なんでロンさんのことそんなに好きなのさー?”
“欲しい言葉をくれたの”
  以前軽口で聞いた時、彼女はたった一言だけそう言った。
  それでも雪には理解出来ない。
  支配することが何より楽しい人間と支配されることでしか生きられない人間がいる。
  自分はこと女に関してのみだが前者で、彼女は後者だということしか、雪には分からない。
  そしてロンはそのどちらでもない。
「七海ちゃんカワイソウだから、俺は優しくしてあげるね」
  太股を掴み指を挿し込む。言葉と裏腹に温かなその感触に指が勝手に動き出す。
「んっ、ん、や!」
  後ろに下がろうとする七海をロンが逃がさないよう受け止める。
「駄目だよ、七海」
  ちゅ、と音を立ててロンがキスした。
  雪の愛撫に耐える七海を宥めるように、何度も触れるだけのキスを。
  恥辱に眉を寄せていた七海の表情が、その内に変わってくる。
  幸せから遠かった筈の顔が、まるで恋人の腕の中で守られているかのように満たされた顔へ。
  何処か恍惚とした七海を眺めながら、雪は彼女の中へ自身を埋めようと身を寄せた。
  すると
「ダメ」
「はっ??」
  これからという時に、ロンが七海を抱えて後ろに下がってしまった。
「だ、ダメって何すか」
「挿れるの禁止。七海は俺のだから」
「……はぁ?」
  理解出来ないロンだが益々理解出来ない。
  自分の女をここまで好き勝手触らせておいて、自分のだからと最後はやらせないとか。
「そりゃないっスよ、ロンさん……」
  ならば昂ぶってしまった己を一体どうすれば良いのか、と雪は途方に暮れた。
  七海はというと、戸惑いながら息を整え明らかにほっとした顔をしている。
  そんな顔をするくらいなら初めから抵抗すりゃいいでしょがと、雪はこの少女を滅茶苦茶にしたい衝動に駆られた。
「じゃ口でしてもらうのは」
「ダメ。俺が七海にキス出来なくなる」
  あっさり言い放つロンを雪は恨めしげに睨む。
「じゃ、何で俺を誘ったんすか……」
「たまに違うことしないと飽きちゃうでしょー?俺も七海も。夏彦は誘ったけど駄目だったし」
(夏彦さん誘ったのかよ……っ!?)
  まさに恐れ知らずとはこのことを言う。雪ははぁーーーっと長い溜息を吐いた。
「やっぱりアンタは最低の男ですね。七海ちゃん、毒に侵されて壊れないうちにさっさと此処を離れた方が良いと思うよ、俺は」
  すっかり萎えてしまった雪はベッドから起き上がりロンに抱えられたままの少女を見下ろした。
  ロンの手がするすると彼女の下肢に下りていく。
「んっ……!」
  再び開始された愛撫だが、彼女の反応は雪の時と違う。
  同じ抵抗をしないでも、何処か安心したような。
(やってることは同じだっつの)
  それでも所有者とそうでない者がするのでは違うのか。
  結局あの少女を本当の意味で弄びいたぶることが出来るのはロンだけなのだと思うと、自分らしくもなく悔しさが沸き起こってくる。
「ロンさん」
  悔し紛れに雪は振り向いて言った。
「あんたは自分で思ってるよりずっとその子のことが好きですよ」
  他の男が侵食する最後のラインを許さない程度に。
「……そうかもね」
  雪が締める扉の向こうで、ロンはただククッと喉を鳴らした。







服従END後。雪結構好き。