「楽しんでいたようだな」
調理室の外、ドアを開けて直ぐの廊下に壁に凭れ腕を組み立っていた風間が待っていたように土方に話し掛けた。
気取った白ラン姿に訳知り顔で
「もっと最後までしなくて良かったのか?」
などと挑発的に言ってくる。土方は舌打ちして風間を睨んだ。
「出歯亀がいんのにあれ以上出来るか」
調理台の上にいた上にそれどころではなかった斎藤は気付かなかったが、事の最中、調理室のドアのすりガラス部分に人影が映ったのを土方は見逃さなかった。
鍵は掛けてあったし外の人物が風間だという確信はしていなかったが、誰が来てもあれ以上続ける訳にはいかず、キリの良い所でこうして切り上げて出て来たという訳だ。
「いつからいやがった」
「ふん、案ずるな。ついさっきだ。そろそろ味噌汁が出来る頃だと思ってわざわざ出向いてやったというのに、貴様か? 部屋の鍵を掛けたのは」
「当たり前だろ。てめェ、自分が調理室を借り切るなんて勝手なこと近藤さんに抜かしたと思ったらアホなことしやがって」
「ちゃんと校長の許可は取ったぞ。この風間が借りるから決して入って来るなよと命令してな」
「生徒が校長に命令すんな!」
「第一、貴様とてその阿呆な状況に喜んだのだろう? 何故貴様が此処にいるかは知らないが、奴と楽しめて良かったではないか」
「喜……っ、………てめぇが調理室を借り切ったなんて聞いたら何に使うつもりか気になって見に来るしかねぇじゃねぇか!」
言ってから気付いた。
「……まさかお前、俺に見に来させること前提で斎藤にあんなことやらせたんじゃねぇだろうな?」
何故か風間は以前から斎藤と土方の秘められた関係を知っている。
基本良い奴なのかプライドが高いのかで、そのことで脅されたり何をされたりということは無いのだが、
考えてみれば風間のこの意地の悪い顔と余裕に満ちた態度。
今までの行動経験から、校長に部屋を借り切って使うと告げればその校長が土方に伝え、土方が気にして調理室を見に来ることは予想出来る。
鍵を斎藤がきちんと閉めておいたとしても、風間が何らかの方法で開けておけば土方は入れるし、
或いは土方の方は斎藤を苛めるついでに引っ掛かれば良いくらいのつもりだったかもしれない。
そして土方が罠に掛かれば裸割烹着姿の斎藤を発見し、何と言うか、堪えられなくなることも予想しようと思えば出来る。
思えば風間の影がガラス部分に映ったタイミングもかなりキリの良いところだった。
けしかけておいて土方と斎藤の良いところで邪魔してやろうとわざと影を見せた……という可能性は充分に有る。と言うかこの風間の態度的に高いのではないだろうか。
風間はそんな土方の思考を肯定するようにニヤリと笑んで言った。
「土方、貴様も若いな。もう少し堪え性を持った方が良いのではないか? あまり勝手をしては斎藤に嫌われるぞ」
お前は一体幾つなんだと言いたくなるような台詞を吐く風間に土方はやられたと思いながら長い息を吐く。
(あんな格好見せられて堪えられるかよ……)
しかし確かに今回ばかりは風間の言う通りだ。気の毒な斎藤を前に大人としては耐えてやるべきだったかもしれない。
何故自分を嵌めた張本人に助言されているんだと落ち込む土方に追い討ちをかけるように
「俺としては貴様でなく沖田とやらを呼んでやっても良かったんだがな」
風間の一言が。
嫌な衝撃を受け、来たのが自分で良かったと心底思った土方は、だが罠には嵌められたものの貴重な経験をしたと言えなくもない。
言わずもがな風間は目的を達成。斎藤を辱め土方をからかった。
さて、一人朝から夕まで悲劇的としか言えなかったのは――――
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Fin.
キンキラ様が割烹着にしろってうるさいので割烹着を選択させて頂きました。何だろこの味噌汁プレイ。
オマケというか最後ボツになった台詞↓
一人トイレにでも篭ってくるがいいby風間