頭がたらいになってガンガン打ち鳴らされているような頭痛、というものをスコールは生まれて初めて経験した。
肺が苦しく体は重いしぐわんぐわんと視界が回る。
徐に額に手を当ててみればアイスが溶け出すような熱を感じた。
これは多分三十九度、いや、四十度? し、死ぬ……。
ふらふらと左右に揺れながらそれでもスコールは必死に足を動かした。
全ては奇跡的に勝ち晴れて付き合うことになった愛しい人の顔を見る為(とついでに休息を取る為に)。
普段の何倍もの時間を掛けて必死に歩を進めていくと、漸く保健室のルームプレートが見えてきた。
(ああ、やっと着いた……)
つい気を抜いてしまったのが悪かった。
スコールの視界がぐらりと揺れる。
(っ倒れる)
自覚はあったがどうにも出来ず、前に倒れていく自分をその儘にするしかなかった。
「おいっ、スコール!?」
どさりと倒れた筈の体は、地面にぶつかるよりも前に傾いた状態で力強い腕に支えられていた。
「どうした、大丈夫か?」
手の平が額に押し当てられる。
「お前……、こんな熱で授業に出ていたのか」
馬鹿が、と耳元で呟かれると、次には体が浮いてクラウドの肩に担がれていた。
相変わらず辛辣……。いや、それより俺は男でそれなりに重い筈なんだが……。
クラウドも男とはいえひょひょいと担いで歩けるのはどうなんだと言いたい。
情けなさで胸が一杯になりながらクラウドにベッドまで運ばれる。
ああ、この立場が逆ならどんなに良かったか。
ベッドに降ろされる瞬間密着したクラウドからはふわりと優しい香りがした。
(ああキスしたい)
霞が掛かった頭の中で原始的な欲求が顔を出すが、我慢だ。
これが風邪ならばクラウドに移したくない。
だから代わりにスコールは想いを伝えるに止める。
「クラウド……好きだ……」
そのクラウドを見つめるグレイ掛かった青の瞳は、本人は知らないがかなり潤んでいた。
更に呼吸は荒く頬はうっすら赤い。
いつも澄ましている顔が泣いたような顔で必死に好きだと言ってくるその様は、まるで幼い子が叱られた後許しを請うているようで。
(可愛い……)
一応約束として付き合うことになっただけのスコールに対し、クラウドの中でここまで愛しさ(と笑い)が込み上げたのは初めてかもしれない。
クラウドは手を伸ばしてくるスコールの手を優しく包み込んだ。
「良くなる魔法を掛けてやろうか?」
「?」
スコールは首を傾げる。
ケアルはあくまでも外傷に効果のある魔法であり病の類には効かない。ということを考えて疑問を持ったのか、それとも単に
熱のせいでクラウドの言葉が理解出来なかったのかは分からない。
だがクラウドはスコールのそれ以上の反応を待たず、スコールの額に掛かる髪を掻き分けた。
其処に唇を軽く落とす。
「………」
固まったスコールに構わず、次には唇へ。
啄ばむように口付けてから唇を離し、呆然としている彼の目をにっと笑って至近距離で見つめた。
「――俺も好きだよ」
それはあの約束と無関係の、クラウドからの初めての言葉。
スコールの体調が間も無く良くなったのは言うまでも無い。
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逆に熱上がりそうな気が。