事件が収束し打ち上げと報告書を仕上げた翌日、クラウドを見送る為、ガーデンの校門に学園のトップ達は勢揃いしていた。
「それじゃあ、本当に世話になったな」
其処にはシド学園長、スコールをはじめとする今回の件に関わったトップSeeD、勿論無事人間に戻れたキスティスの姿もある。
「こちらこそ色々有難う」
クラウドの情報がなければキスティスは人間に戻れなかった。タッチミーキングによってもっと多くの人達が被害にあっていたかもしれない。
クラウドとキスティスは互いがカエルであった時には会っていないが、後で話を聞いて彼女はクラウドに感謝した。(ついでに元カエル仲間として仲間意識も持った。)
「話したとおり、俺はエスタに店を持っているし何でも屋をやってるから、今回の礼の他にも今後力になれることがあると思う。何かあった時はいつでも言ってくれ」
「うん! ありがとう〜!」
「またいつでもガーデンに遊びに来てね〜」
間延びした声でセルフィとアーヴァインが答える。
「またカエルになった時はいつでも俺様のペットにしてやるから来いよな」
「いえ、その時はぜひ私の元に」
「誰が行くか!」
サイファーの悪態よりもシドの誘いの方をクラウドは全力で拒否した。
もし三日前ガーデンに辿り着いた時サイファーでなくシドに拾われていたらと思うと全身が総毛立つ。何と言ってもジュースにされていたかもしれないのだから。
クラウドは八つ当たりを兼ねてゼルに声を掛けた。
「ゼルはその調子の良い口を何とかしておかないと、次はどうなるか分からんぞ?」
カエル時代から昨日の女呼ばわりまでゼルには結構な頻度で失礼なことを言われたが、人に戻った以上くだらないことを言われれば流血沙汰になる自信がある。
「わ、分かったよ!」
ゼルは不穏な気配を感じ取りさっとシドの影に隠れた。
シドを防御壁にするあたりは抜け目ない。クラウドは目を細めたが、ふと、スコールが先程からずっと黙っていることに気付く。
「スコール?」
「もっと、ゆっくりしていけば良いのに」
ぽつりとスコールが零した。
「え?」
「あんた、他の生徒達と挨拶を交わした時も大分別れを惜しまれていたじゃないか。ここに入学して欲しいと言っていた女生徒もいた」
「あー……」
そういえばそんな声も聞こえた気もする、とクラウドは頬を掻いた。
「ギャップ萌えってやつだね〜。緑ガエルちゃんがまさかの金髪碧眼美形とか」
「はは。惜しんでもらえるのは嬉しいけど、部外者の俺がだらだらとガーデンに留まるのは良くないだろ。入学して欲しいと言っても俺学生の歳じゃないし」
「え? 歳いくつ?」
「ひみつ」
「えー教えてよ〜う」
セルフィが追究する様子を眺めながら、スコールは寂しそうに呟いた。
「カエル姿のあんたとは結構話した気がするが、こうして元に戻ったあんたのことは何も知らないんだな。別に、だからどうというわけでもないが」
「スコール……」
確かに昨日は元に戻ってから今回の事情聴取やガーデン生の相手やらでスコールとはあまりプライベートに話せていない。
クールなようで意外と人が好く、こうして寂しそうにしてくれるスコールに、クラウドはくすりと笑みを零した。
スコールの前に進み出て項垂れた顔を覗き込む。
「また来るよ。そうしたら、今度はもっと仲良くなろう」
にこりと笑いかけると、スコールは一瞬酷く動揺した顔をして、それからこくりと頷いた。
(これは、もしかして)
(スコールに春が来た?)
セルフィとキスティスが女性特有の勘で目配せをしたことに気付けたのは、意外とその手のことに聡いサイファーのみであった。
別れと再会の約束を告げ去っていったクラウドの後姿を見送ってから、サイファーは「あ〜あ」と大きな溜息を吐いた。
思えばかなり楽しめた三日間だった。
拾ったカエルが喋って、自分を人間だと言って、見たことも無いモンスターに出会ってそいつを倒して、人間に戻ったカエルはまさかの美形で。
短い間だったが御伽噺のように濃かった。加えてガーデン唯一のライバルの頭が春になる瞬間まで見られたとあっては、これはあのクラウドに感謝する他は無い。
それにクラウドが言ったように、また近いうち彼には会えるし、会ったら会ったでまた面白いことが起きそうな気がするのだ。サイファーの予感は当たる。
サイファーはこの新たな出会いをにやにやと噛みしめて歩きながら、たまたま見つけた幼年クラスの子供にご機嫌のままに声を掛けた。
「ようボウズ、春の生き物といえばなーんだ」
「? なに、なぞなぞ? オタマジャクシとか」
「お、勘がいいな。じゃあオタマジャクシは何になるか知ってるか?」
「カエルに決まってるじゃん」
「じゃあカエルは何になるか分かるか?」
「はぁ? カエルは最後までカエルだろ」
「ぶー。カエルは将来……」
「将来?」
「人間になるんだぜ」
SeeDとカエルの三日間。
その事件を知らない子供から「ばかじゃねーの」と返ってきたのは言うまでもない。
不思議なふしぎな三日間。
← Fin.