「好きなん、です」
皆が出払って二人きりの部屋で、気付けばは竜崎にそう告げていた。
パソコンに向かいキーボードを叩いていた指がぴたりと止まり無音が部屋を支配する。
同時に竜崎がくるりと振り向いた。無表情でを見ている。
は自分が口にした言葉にはっとして口を覆った。
そんなことをしてももう遅いと分かっているのにそうせずにはいられなかった。
(私今、何……言った?)
「ご、ごめんなさい!」
咄嗟に謝罪を口にしてから即座にこの場から逃げたい衝動に駆られ竜崎に背を向ける。
竜崎も、仕事中に突然馬鹿なことを言い出した部下に呆れるくらいはするかもしれないがすぐに
忘れてくれるだろう。そう期待して。
「何がですか?」
ところが竜崎の声がを呼び止めた。彼は聞き逃してくれないらしい。
けれどどう考えても非はにあった。
は逃げを断念し足を止め、気まずい思いをその儘に竜崎に向き直る。
「変なことを言ってしまってごめんなさい。忘れてくだ……」
「違います」
竜崎が言葉を遮った。
「何が、好きなんですか? と聞いているのです」
「………」
「さん」
思いがけない質問に戸惑うに沈黙を許さないように、彼は答えるよう目で促していた。
「竜崎さん……が、」
強い視線に誘導されて、惑いの中糸で引かれる様に唇が動いた。
この儘口にしてしまってもいいのか、自分は大変なことをしているのではないか。
分かっているのに竜崎の目はそれを制止しなかった。
「好きです」
の声が震えた。
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