「困りますね」
簡潔な竜崎の言葉だった。
の胸にかっと熱いものが込み上げてぎゅっと手を握る。
だが彼の言葉には続きがあった。
「捜査中にそんなことを言われても困ります。ですから」
そう言ってペンを取り傍らのメモに何かを書き出す。その作業はすぐに終わった。
「今夜十一時にこの部屋に来て下さい」
彼によって切り取られたメモを渡され、そこに視線を落とせば数字が書いてあった。
彼の言葉からそれがホテルの別室のナンバーだと分かる。
……まさか告白の返事を聞かせてくれるのだろうか。今すぐでなく、態々別室で?
には竜崎の思考がよく分からなかったがそれは今に始まったことではない。
捜査の場に私事を持ち込みたくないからかもしれないし、もうすぐ皆が帰って来るということで気を遣っているのかもしれない。
どちらにしても場を弁えずおかしなことを言って迷惑を掛けたのはだ。
そんな部下の失態に対し少し丁寧すぎる気はしたが、面倒な顔を見せず対応してくれる竜崎は
優しい。
「……はい」
告白するつもりで言ったのでも返事を期待していたのでもないけれど、は彼の厚意に甘えることにした。
「では後程」
またパソコンに向き直りタイピングを再開した竜崎の背中を見つめてから、は部屋を後にした。
(何時の間に好きになったのかな……)
正直に言えば、ついさっき告白するまで自分の気持ちに気付かなかった。
あの言葉は捜査に没頭する彼の背中を見ていたらぼんやりと浮かんできたもので、好きだと自覚した今も
まだその形は確かではなかった。
彼の言葉に一喜一憂する自分は恋をしているように思う。
この気持ちは只の憧れや敬意とは違っている。
でもだからといって激しい恋情だともまだ思えない。
思わず言葉にしてしまうくらいだからそれなりに強いとは思うのだけれど。
世界のLに対しそんな気持ちを持つことはおこがましいようにも思い、それがを抑制し気持ちを不明瞭にしていた。
―――竜崎は何て答えるのだろう。
不安の中で高鳴る胸を押さえ込み、は一先ずの仕事に専念して夜を待つことにした。
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