「スコール、次の時間授業だろう? またサボる気じゃないだろうな」
クラウドは立ち上がりカチャカチャと治療用の道具を片付けながら話し掛けてくる。
スコールの顔が曇り少し険しさを滲ませていることには気付かずいつもの調子だ。
「あんな講義つまらない」
「つまらないって。駄目だぞー、そうやって自分の実力に胡坐を掻いてちゃ。つまらない講義だってちゃんと意味があるんだ」
「……俺には此処にいることの方が意味がある」
「意味? スコール、保健室は怪我をした奴が来る場所であって、何処も痛くない奴が来ても意味なんてないだろ?」
そうやって軽く笑いスコールの言葉を受け流すクラウドに、スコールの胸は熱くなった。
分かってやっているのだろうか。それとも単に「先生」としてサボリに来た生徒を教室に帰そうとしているのか。
どちらにしても、クラウドにとってスコールは特別ではない。
さっきのアーヴァインとの光景。あんな風に他のたくさんの生徒もクラウドの元を訪ね、クラウドと話し、クラウドと笑い合っているのだ。
そう考えたら突然スコールを酷い焦燥が襲った。
保健室に足繁く通っても、それだけでは所詮大勢の生徒の内の一人に過ぎない。ならば行動を起こさなければ。回りくどいやり方ではなく、
直球勝負で。
最早スコールに相手が男だとかの迷いは無かった。指揮官としての資質である大胆さと決断力がこんなところでも輝いた。
ベッドのあるスペースを囲む室内の水色のカーテンをシャッと開けてクラウドが窓辺へと向かう。
窓際の植木鉢に水を差す為だとスコールは知っていた。
「痛いところがあればいいのか」
クラウドの背後に近付き問い掛ける。クラウドは振り向かず、水差しから水を注ぎながら穏やかに言った。
「何処か怪我でも?」
役目を終えた水差しが窓際に置かれる瞬間を待って、スコールはクラウドの右手首をぐっと掴む。
「スコール? ……!」
振り向かせたクラウドをその儘横のベッドに引き倒した。
仰向けに倒れたクラウドの重みでギシリとベッドが軋み、白いシーツに波が立つ。
クラウドを下にして、スコールはベッドの縁に膝を上げた。
「―――胸が痛いんだ」
他の誰かの前で笑わないで欲しい。
苦しさと想いを込めた吐息に、クラウドが目を見開いた。
自分といる時以上に楽しそうにしないで欲しい。そんなのはどうしようもない我侭だと分かっているのに、どうしようもなく願ってしまう。
「先生……どうにかしてくれ」
ゆっくりと、クラウドの顔に近付いていく。
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先生に手を出しちゃいけません。