薄明・3





  カッと身体が芯から燃え尽きるような熱さが喉から全身に広がって、取り戻しかけた土方の意識が酷く遠くに、急激に押しやられていく。
「う! グ、ああッ!」
  胸を掻き毟りたくなる程の熱が心の臓から管を通り指の先まで運ばれ、各々の負傷した部位に辿り着くや否や其処に凄まじい痛みを与えた。
  然し次の瞬間には痛みは露と消え代わりに震えるまでの疼きが襲う。
「ッ、っ」
  あまりに激しい熱のせいなのか、視界が徐々に赤く染まってゆく。眼から出血したのかと思ったがそうではない。目眩がする程の途轍もない変化が己を襲っているのだ。
  ちかちかと明滅する視界の中で何とか目を抉じ開けてじくじく疼く患部を見れば、裂けていた筈の其処はいつの間にか閉じ、周囲の皮がまるで生き物のように傷口を塞ぐべく前進して這っていた。
  その光景に吐き気を覚え、土方は訳も分からず藻掻いた。
  何が起こっている!?
  何故こんなことに?
  己の中の冷静な部分が叫ぶように答える。
  分かっている。“あれ”が体内に入ったからだ――!
  この身を襲う全ての原因を理解はしても、最早どうすることも敵わない。
  何故こんなことをと責めたくとも、その対象すら目が眩み見つけられなかった。
  ただ木偶人形の如き影がわらわらと増えていくような気がしたが、 この死にかけた器に注がれた薬はあまりに強烈過ぎて、刺激に耐えられず意識が水底に深く沈んでいった。
  まっくらな、否、真っ赤な、闇へと。
  闇の底で、誰かが酷く悲しそうに此方を見つめていた気がした。

  そして土方は、赤い夢を見る。

  血臭の濃い、暗く赤い夢を。