白髪の鬼、が居る。
鬼の顔は見えないけれど、彼はとても美しく舞っていた。
舞うたびに、鬼は彼を同心円状に囲む脆い人間達を切り刻んで、華咲くように血飛沫が飛んだ。
人など数え切れぬほど斬ってきて、似たような景色を幾つも見てきた。
それでもこれ程に鮮やかに疾く殺したことなど、きっと無い。
その花開く様を見ている内に、異様な喉の渇きを覚えた。
興奮に息が激しく荒れ、腕がむずむずと疼き出す。
この壮絶な匂いをもっと嗅ぎたい。芳しい程の血臭を、嗅いで、舐めて、一滴残らず飲み干したい。
美しい鬼はそんな俺の心を読んだように言った。
「さあ――」
いきましょう。
二人で
ずっとずっと果ての無い、永遠の地獄へ。
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