「クラウド?」
意外すぎるカエルの名を反芻するスコールの呟きにサイファーがぷっと吹き出した。
「カエルには勿体無いセンスの名前だな」
カッコ良過ぎるんじゃねぇの?サイファーが付け加える。
『 だから、俺は人間だと言ってるだろうが。いい加減カエル扱いはヤメロ 』
カエル……いや、折角名乗ってくれたのだから、これからは彼の意思を尊重して
クラウドと呼ぶことにしよう。
クラウドはタイプしてからキッとサイファーを睨んだ。
(カエル扱いすんなって言われてもなぁ)
カエルだし。とサイファーは睨んでも迫の無いカエルの顔をぼんやり眺めた。
「そういえばあんた、一体何処でそのタッチミーキングとやらにやられたんだ?」
『 ああ、それは、 』
スコールの問い掛けにクラウドが説明しようとすると
「スコール〜!!」
突然テンガロンハットを被った長髪の男が教室に飛び込んできた。
「大変大変だよ〜! キスティがカエルになっちゃったんだッ!!」
「……は?」
カエル?と条件反射的に一同はクラウドガエルを見た。
「あれ? どうしてカエルが此処にもいるんだ? ってそんなことはどうでもよくてさぁっ、
そうだよ、キスティがカエルに、
カエルにされちゃったんだ」
「落ち着けアーヴァイン。どういうことか最初からちゃんと説明してくれ」
大声で叫ぶテンガロンハットの男に額を押さえながらスコールが尋ねた。まさかとは思うが、こ
れはもしやこのクラウドと名乗るカエルの身に起きたことと関係あるのでは。
「う、うん。えーと、キスティは二人のSeeD候補生と一緒に炎の洞窟に行ったんだ。そうしたら洞
窟入り口の前に大きなカエルがいて、邪魔だからどけようとしたら変な魔法をかけられて
……、カエルにされちゃったんだって。
一緒にいた候補生もカエルの姿になっちゃって、試験どころじゃなくなって三人で帰ってきたところ
を僕とセフィが発見したんだ」
「……それで、キスティス達は今何処に?」
「キスティは鏡で自分の姿見てから発狂しそうになって部屋に引き篭もっちゃった」
「………」
「二人の候補生はセフィがついて慰めてる。二人ともキスティほど酷くはないけど落ち込んでたから」
「……これはちょっと、大事だな」
トゥリープ先生がカエルに!!?とざわめく教室の生徒達を見ながらスコールは頭を押さえた。
こんなに一日に何度も頭痛を感じるのは
初めてだ。
「ふん、神経の細い奴らだなぁ」
サイファーが鼻を鳴らした。
「見ろよ、こいつなんてこんだけ大勢の前でも平然とカエルやってるぜ」
学習用パネルの上のクラウドガエルを指差すとクラウドは剣呑に目を細めた。
『 お前、バカにしてるのか? 』
「褒めてんじゃねーか」
『 まあどうでもいいが、これでSeeDさんにもタッチミーキング討伐の大儀ができたわけだな 』
何故か教室にいたカエルのブラインドタッチとディスプレイの文字に気付き、アー
ヴァインは目を丸くした。
「もしかしてこのカエルも人間?」と隣にいたスコールに尋ねる。
「ああ。といっても生徒じゃない外部の人間で、クラウドというそうだ。タッチミーキングという巨大ガエルのモンスターによって
この姿に変えられたらしい」
「! それってキスティの言ってたモンスターだよ。名前は知らないけど、確かに巨大なカエル
だったって」
「同じモンスター、だよな?」
ゼルが確認するようにスコールの顔を見た。
「おそらくな。クラウドもその辺りで襲われたのか?」
『 ああ、炎の洞窟周辺だ。どうやらあの辺りに生息しているらしいな 』
「どうして突然現れたんだろう。これまでそんなモンスターの報告は無かったのに」
『 さあな。塒を変えたんじゃないか? カエルの都合なんて知らないが 』
「………」
カエルの格好で言うには違和感がありすぎる台詞だとか思わないのか?スコールはツッコミたかった
が何とか堪えた。
「兎に角、まずは学園長に報告してくる。少し待っててくれ」
そのまま教室を出て学園長室へ向かおうとしたが、そんなスコールをアーヴァインが慌てて
呼び止める。
「あ、スコール!? 忘れたのかい、シド学園長は今出張中だよ。帰ってくるのは確か明日だった筈!」
「……そうだった」
どうもあの学園長は影が薄いからな。スコールは唇だけで言い訳を述べ、確かにシドがその
ようなことを一昨日言っていたと思い出す。
スコールは溜息を吐いた。
「肝心な時にいないなあの人は。仕方ない、残念だがクラウド、モンスター討伐に出られるのは早くて明日だ」
『 マジかよ…… 』
肩を落とすクラウドガエル。
「ま、そう気を落とすなって。この俺様がお前の飼い主として責任持って討伐に出向いてやるからよ」
サイファーがにっと笑ってその肩を叩いた。食堂では「飼い主」を否定
したものの、サイファーがカエルの拾い主であることに変わりはないからだ。
『 俺はペットじゃない 』
「細かいことはいいじゃねーか。俺はトップSeeDだぜ。有難く思えよ?」
「俺も行こう」
スコールがクラウドとサイファーのやり取りを見ながら言った。
「え。スコールも行くのか!?」
ゼルが驚いたように叫ぶ。こんな、言っちゃ悪いが間抜けな事態に、あのスコールが動くとは。
「ああ。人をカエル化させるようなモンスターがこの辺りをうろついているのは危険だ。これ以上ガーデンにカエルが増えたら堪らない。
それに、これじゃあまりにキスティスが不憫だしな」
スコールはちらりとカエルクラウドを見た。
(あのキスティスがこんな姿じゃな……)
少なからず自分の容姿に自信を持っているであろう彼女のこと。こんな姿になってしまってはそ
の精神的ショックは計り知れない。
そう考えて、ふとスコールは思った。
このクラウドというカエルは本当はどんな姿なんだろう?
じっとクラウドを見る。
(まぁ、カエルにしては可愛い方だと思うが)
スコールはカエルは別に嫌いじゃない。ただカエルの顔など真剣に見たことはなかったから、こ
のカエルクラウドの顔が標準以上か
以下かというのは正確には判断しかねる。しかし印象としてはやはり可愛い方かもしれないと思う。
『 なんだ、じろじろ見て 』
スコールの値踏みするような視線に耐えかねたのかクラウドがタイプした。
「いや、別に。……そういうことだから、明日学園長に話して承認を得て、それから討伐に出発だ。
メンバーは恐らく俺とサイファーで許可されると思う」
「あ、スコール。俺も行く行く!」
ゼルが挙手をした。
「ゼルもか?」
「だって見たことも聞いたこともないようなモンスターだろ? 討伐しないわけにはいかないし、
今しか見れねーじゃん!」
「……分かった。アーヴァイン、キスティスにもそのように伝えておいてくれ。少なくとも明日まではヒトに戻れない
だろうから我慢してくれと」
「え! ちょっ、僕が!?」
「任せたぞ」
「………戻ったら絶対メーザーアイで焼かれちゃうよ……」
哀れなテンガロンハット男の泣き言を聞きながら、クラウドもまたキスティスとやらが自分と同じ間抜けな姿になっていることを
不憫に思った。
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アーヴァインはキスティスと筆談済み。