間もなく教師がやって来た為、面々はそのまま教室で取り敢えず午前の授業を受けた。
一応教師に事の報告はしたのだが、クラウドを見せ「コレは実は人間なんです」と言ったゼルの言い方が
まずかったのか、「馬鹿を言ってないで早く席に着け」と一蹴されてしまった。
説明をするのも面倒なのでスコールはゼルを引き下がらせ、ついでにゼルの物言いが可笑しかったのかニヤ
ついているサイファーを諫める。
コレ呼ばわりされて不機嫌になりかけたクラウドだったが、スコールが
「午前の授業が終わったら対策の為の情報収集をするから図書館で待っててくれ」と伝えると、
大人しく引き下がって教室を出て行った。
ガーデンの授業は基本的に部外者が聴講出来ないのだ。
蔵書の豊富にある図書館ならクラウドも退屈しないだろうし、スコールはタッチミーキングについて調べる時
彼に付き添ってモンスターの確認をして欲しかった。
本当は同じガーデンの者、つまりカエル化した二名のSeeD候補生とキスティスのうち誰かが確認すれば
良いのだが、彼らは今の状態にショックを受けている。
となると、カエル化した者の中で最も冷静な判断力を持っていそうなのはこのクラウドだ、とスコールは考えていた。
(キスティスだってプロだからモンスターの確認くらい出来るだろうが、部屋から出て来いなんて言ったら本当にメーザーアイ
かムチの餌食だ)
などと危険回避的思考が働いていたことも事実だが。
さて、その待ち時間中、クラウドは徐々に変化する体の異変を感じていた。
体全体でなく、その異変は喉だけに起きているものである。
風邪を引いて腫れた喉が薬を飲んだ翌日に良くなっていることがあるが、それがもし数時間の内に起きることがあるならばこんな感じ
かもしれない。喉が段々すっきりしていくような気がするのだ。
(これはまさか――)
ある予感。そしてそれは、待ち合わせの時間が近付くにつれて大きくなっていった。
昼休みを告げるチャイムが鳴って数分の後、授業を終えたスコールは一人図書館にやって来た。
アーヴァインはゼルを巻き添えにしようと彼を伴ってキスティスの元へ向かったし、サイファーは風紀委員の仕事とやらで何処か
に行ってしまった。
「待たせたなクラウド。早速データベースを検索してみよう」
図書館に着くなり、机の上で本を読んでいたクラウドを促して奥のコンピュータールームに入る。
一番端のパソコンデスクに着きIDとパスワードを入れログインしてから、スコールはクラウドを掴み上げてキーボードの
横に置いてやった。
クラウドは大人しい。
サイファーが同じことをする時クラウドは身を捩っていたから、彼が嫌がる素振りをしないことを少々意外に感じながら、スコール
はカタカタとキーボードに文字を打ち込んだ。
「タッチミーキング、と」
一瞬でサーチを終えたコンピューターはディスプレイ上に結果を表示する。
“該当0件”
「……該当ナシ、か」
(タッチミーでやってみるか)
キーワードを入力し直す。新たに画面が切り替わった。
「一件……」
今度は“該当1件”だ。
「少ないな。古のモンスターというだけある」
クラウドを見下ろすと、彼もまたスコールを見上げ仕方ないなというように肩を竦めた。
「兎に角見てみよう」
項目を選択しクリックする。現れた画面にはこうあった。
■タッチミー
体長30 cm-40 cmの鮮緑色の蛙型モンスター
二本足での歩行が可能
草原又は森林に生息するが、環境・生殖時期に応じ住処を変えることもある
極めて稀少
技:カエルパンチ、カエルのうた、トード
効果:睡眠、蛙化
その内容の薄さに、スコールは溜息を吐く。
対策や弱点といった役立つ内容が何も無いし、画像も無い。
「真新しい情報は載ってないな。あんたに聞いたことと同じ情報しか無い」
顎に手をやり渋い顔をするスコール。情報が少ないだろうとは思っていたが、こうまで少ないとは。
まあ、確かにそんなモンスターが実在することは分かった。
「クラウド、他に何か知っていることはないか?」
データベースが当てにならないならば書物を調べるしかないが、彼のさっきの口振りならこのモンスターについて書かれた文献を
目にしたことがあるのかもしれない、と期待して尋ねてみる。
カエルクラウドは腕を組んで何か考えている様子。だが、何も返事が返ってこない。
「?」
返事をする気があるならまたキーボードにタイプしようとする筈だが、そんな動きも無い。
そういえば此処に来てから彼の反応は薄いような気がする。
「クラウド?」
聞いているのか、と再度スコールは問おうとしたのだが、その前にスッとカエルの
片腕が真っ直ぐスコールに向かって伸ばされた。
といってもスコールに触れようとしているのではない。スコールの顔の方に向けられた小さなカエルの手の平は、質問を続けようとした
スコールを押し止めるかのように眼前で広げられ、ジェスチャーで「待て」と言っているのだ。
「? なんだ?」
スコールにその意思が伝わったようだと分かると、クラウドは腕を戻し、自分の喉にそっと触れてみた。
先程からずっと妙な感じがしていた。喉がくすぐったいような、むず痒いような、すっきりしたいような。
これは良い兆候だと確信はあった。ただ、もし口を開いてみてケロとか何とか非常に不本意な鳴き声が出てしまったら、と思うと
自己嫌悪に陥りそうで恐ろしく出来なかったのだ。
だが今ははっきりと、声帯だけが蛙状態から解放されて以前のものに戻っているのが分かる。
明らかに今までと違いすっきりしているのだ。……といっても外見は相変わらずカエルの儘のようだが。
「……………」
クラウドは思い切って口を開けた。
「声が……」
「え?」
不意に聞きなれない小さな声が聞こえて、スコールは不審の声を漏らしていた。
出た声がちゃんと本来の自分のものであったことに胸を撫で下ろして、クラウドはもう一度、今度は大きく口を開く。
「声が、出るようになったみたいだ……」
一句一句確かめるように声を出すクラウド自身も信じられない。
嬉しい変化に驚きながら、スコールを見上げる。
彼は目を丸くしていた。
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データてきとー。因みにクラウドガエルはもっと小っちゃいです。