SeeDとカエルの三日間・3-3





  緑茂るアルクラド平野。その曇り空の下を一行は行軍している。
  晴れて学園長の許可を取ったクラウド達大ガエル討伐チームは、一度解散して各々の武器を取ってから校門に集合し出発した。
  炎の洞窟を目指すこれまでの道中、鳥型や芋虫型のモンスターに何度か鉢合わせたもののそれらは弱く、クラウドがバスターソード(ミニ)を振るわずともスコール達SeeDは一瞬であっさりと倒していた。
(慣れたものだな)
  無論このエリアのモンスターは最弱レベルだから、この程度で僅かでも煩わされることはあってはならないのだが、それでもクラウドは彼らに依頼して良かったと思えた。
「皆、昨日タッチミーキングに関する情報は伝えておいたが、此処でもう一度確認をする」
  漸く目的地である洞窟入り口が見えてきたところで、先頭を歩いていたスコールが一同を振り返って言った。
「巨大蛙型モンスターであるタッチミーキングは、聴覚を通して作用する魔法で人間を蛙に変える。またヤツの手に触れられても変化してしまうから気を付けろ。今は皆片耳に耳栓をしていると思うが、ヤツが出没したら必ず両耳に嵌めろ。ハンドサインで連携を取り状況に応じた攻撃を行う」
「で、もしカエルになっちまったらどうする?」
「サイファー、昨日話した筈だが。……まぁいい。万一カエル化した場合は早々に前線を離脱しろ。大ガエルにどれだけ生命力があるかは不明だが、こちらがカエル化した場合攻撃力は四分の一、更にミニマム化すると一しかない。はっきり言って足手纏いにしかならない」
「………」
「ちょこまか動くと仲間に潰されちまうかもしれないってことだな!」
(ちょこまか動く足手纏いで悪かったな)
  クラウドは昨日の内にスコールに「カエルとのバトル中は隠れてろ」と言われているので、今のはクラウドに対する念押しでもあるのだろう。然しゼルは完全に無意識だ。
  仕方ないとはいえ失礼な彼らに唇を噛み、クラウドは一歩前に進んで周囲を見渡した。
  炎の洞窟周辺には、短く青みの薄い草が生えていて見通しが良い。
「俺がヤツに遭遇したのはこの辺りだったんだが」
  今のところモンスターの姿は見えない。
「そう都合良くはいかないか。兎に角手掛かりを探してみよう」
  真新しい足跡でも無いかと、一同は痕跡を探す。
  うろうろしているとやがてぽつりと水が脳天を打った。
「……雨だ」
  粒の小さい雨がしとしとと降り始める。降るとは思っていたが予想より早かった。
「うぜぇ雨だが、カエルなんだからこれで出てくりゃなー」
  湿り始める髪を鬱陶しそうに掻き上げながら、「さっさと出て来いよ」とサイファーが足元の石を蹴飛ばした。
「!」
  それがゼルの脹脛に当たりゼルが思わず下を見ると、
「何だこれ?」
  足元の土に違和感を感じる。
  今まで気付かなかったが、其処だけ周囲よりも少し土が盛り上がっている気がするのだ。
「?」
  ゼルが調べようと屈んだ時だった。
「っうわ……!!」
「!?」
  グワッと足元が隆起したと同時にゼルの体が上空へと吹き飛ばされる。
  まるで蓋のようになっていた土がぱかりと開き、その下の大きな穴から何かが勢いよく飛び出してきた。
「……ヤツだ! タッチミーキングだ」
  クラウドが叫び、SeeD達は一斉に臨戦態勢を取った。
  それは、クラウドやキスティスの証言通り体高五メートルはあるかという巨大な蛙だった。
  深い緑色の体に黒々とした目玉をぎょろぎょろさせてスコール達を見下ろしてくる。
  まさしくカエルモンスターの王だ。
「はっ成る程、キングというだけあってデカイじゃねぇか」
「で、でか……」
  サイファーは面白そうに目を細めながら、跳ね飛ばされたゼルは着地し体勢を整えながら、手筈通り耳栓を装着する。
  スコールは既に準備を終えていて、サイファーとゼルに目配せするとタッチミーキングの方へと腕を振り下ろした。戦闘開始の合図である。
(――行くぞ!)
  SeeD達三人が勇ましく拳と剣を構える中、一人クラウドだけが岩陰に隠れていた……。