初めに斬り込んだのはスコールとサイファーだ。
タッチミーキングの両サイドから跳躍し頭を狙うが、キングはそれより早く足を曲げバネのように伸ばして飛び上がった。
そこにゼルが前方から攻撃を仕掛けカエルを殴打する。
「ゲロゲロ!」
「うげっ」
殴った瞬間ゼルの拳にぬめりとした感触が伝わって彼は悲鳴を上げた。
「なんじゃこりゃ!」
どうやらこのモンスターの体は粘度のある液で覆われていてダメージを吸収してしまうらしい。
水以外なら効きそうだな、と見ていたサイファーがサンダラを放つ。
それが標的に当たり電撃を加えると、タッチミーキングは激しく鳴き声を上げながらじたばたともがいた。
(魔法が効くぜ)
モンスターには物理攻撃が効くものと魔法が効くものの二種類いるが、恐らくこれはその中間種。外部を保護するこの粘液を魔法で除去し、除去したら中身を物理的に叩く。有効な戦法に気付き、三人は目配せし頷いた。
ゼルが詠唱時間を稼ぐ為率先して前に出る。
自慢の拳はあるが魔法があまり得意でないゼルがこの素早いモンスターの時間稼ぎに動くのが得策だった。
「ゲロゲロ!」
カエルがびょんびょん飛び跳ねながら連打されるゼルの攻撃をかわす。
そこへスコールとサイファーがそれぞれ炎と雷を浴びせた。
「グァアアッ」
カエルの体表から粘液が溶け落ち、その下の皮膚が露になる。これで剣や拳での有効な攻撃が出来そうだ。
仕上げにかかろう、と三人が気を緩めたその時――
「うっ!!」
ゼルが突然動きを止めた。ぴりりと体中が痺れ体を殆ど動かせなくなったのだ。
(な、何だこれ!?)
痺れは先程タッチミーキングの粘液に触れた指の先から広がっている気がする。
(毒!)
可能性に思い当たり慌ててスコールにエスナを頼もうとするが、互いに耳栓をしているという状況のせいで指示が僅かに遅れた。
「ゲロゲロゲロ!!」
痛みに怒ったカエルが大きく跳躍しゼルの上に降ってくる。根性で僅かに足を動かし何とかそれを回避したが、体勢を崩したゼルに続けざまにカエルの平手が襲い掛かった。
「うぐっ!」
呻きと共にゼルは地面にめり込み、そしてその瞬間、ぼんっと軽い爆発音がしたかと思うと一瞬にして彼はその姿を哀れな一匹のカエルへと変えた。
(!)
「ちっ」
スコールが目を見開きサイファーが舌打ちした。自分に起こった悲劇にあわあわとゼルは取り乱す。そこへ更に巨大蛙の長い舌がびょんとゴムのように伸びてきた。
(うわぁああ!)
なすすべなく空中に巻き上げられたゼルは悲鳴を上げる。地上の二人は彼を助け出すべく剣を構え身を低くした。
そんな二人の前を、シュッと小さな影が横切っていく。カエルだ。
「クラウド!?」
「超究武神覇斬!!」
その小さなカエルは、さながらピンチの時のヒーローよろしく唐突に現れた。
ミニチュアのバスターソードを凄まじいスピードで振り被り巨大蛙に幾度も幾度も叩きつける。
小さなヒーローといえど、鬼神のように剣を振り続けるその様は気迫に満ちていた。
ただし
(あれ各ダメージ1なんだよな……)
そう、クラウド自身が言っていたが、カエル+ミニマム状態で攻撃力は1。
一見大ダメージを与えているように見えるあれだけの攻撃を加えていても実態は攻撃力1×15=15と切ないことこの上ない。
しかし15とはいえタッチミーキングにとって舌への直の攻撃は予想外だったようで、条件反射的に舌は力を抜きゼルを取り落とした。
ぼとりと落ちたゼルにスコールは即行エスナをかける。
毒の浄化されていく感覚にゼルはぶるぶると体を振り、その横にクラウドがくるくると体操選手のように回転しながら着地した。
足手纏いにしかならないと思っていたクラウドに救われる形となったが、ぼうっとしていられない。
タッチミーキングの鳴嚢が大きく震えている。これはカエルが大きく鳴く時の動作だ。
「オイ!」
気付いたサイファーが注意を促し、耳栓をしているとはいえ用心の為耳を両手で塞ぐ。
「ゲロゲロ〜ケロン♪ゲロゲローン♪」
それでもまだ聞こえそうになるカエルの歌声に、スコールは早々にケリをつけなければと思った。
見ればカエルは歌うのに夢中で動きを止めている。これはチャンスだ。
「サイファー!」
最早戦力外と化したゼルは無視してサイファーに声を掛けるとサイファーを既に準備を整えていた。
耳を塞ぎながら唱えていたブリザガをスコールが放つ。
「ゲロッ!」
氷塊が巨大蛙にぶつかり忽ちその身を凍らせていくと、サイファーがそれに合わせて駆けた。
左手を掲げ敵に炎を炸裂させると、ハイペリオンを振り回して確実にダメージを与えていく。
「ゲ!? ゲロッ」
「おらァッ!!」
仕上げに衝撃波を放つと、それは真っ直ぐにタッチミーキングへと向かいその巨体を切り裂いていった。
「グォオオオオオッ」
そこに更に接近したスコールのフェイテッドサークルも加わる。
一気に大傷を負わされたタッチミーキングは堪らず断末魔の悲鳴を上げた。
血を噴き出しながら緑の巨体が傾いてゆく。
ドーン、と地面が大きく揺れて、タッチミーキングはその場に崩れ落ちた。
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