嫌なら止めるなどと言っておきながら竜崎はの制止を聞かなかった。
もしもが本気で力の限り我武者羅に暴れて抵抗していたら結果は違ったかもしれない。
だが竜崎はの迷いを見透かしたように、戸惑いの中隙を突くようにを和らげる言葉を与えた。
だからはどうしてもそこまで抵抗できなかったのだ。
口先だけは最後まで行為を認めなかったけれど、決して乱暴でない激しく巧みな手技で追い詰めてくる竜崎に勝つことは出来なかった。
なまじ恋情があるせいで拒み切れず言葉と裏腹に快楽の奔流に呑まれるを、竜崎は行為を終えるまで解放しなかった。
「はぁ……」
竜崎との関係が変わったように思われたあの夜からもう三日が経っていた。
実際は彼との関係に何の変化も無く、只気まずくなっただけに過ぎない。
―――竜崎は何も言わなかった。
『試してみましょう』
あんなことを言っていたくせにどうしてあれから何も無いのか。
結局、竜崎が本気かどうかは分からない儘。
(どうしてあんなことしちゃったんだろう)
流されるなんてサイテイだ、とは自己嫌悪に苛まれた。
最初は確かに拒否していたし拒否し切るつもりだったのに、拒み切れなかった。
竜崎が好きで、与えられる愛撫が気持ち良くて、行為に溺れてしまった。
あの時間を思い出すと恥ずかしくて堪らないのに、あれから何度も、竜崎の温度で幸福を感じてしまった自分を思い
出してしまう。
もう、明白だった。
絶対にあの日まで竜崎をああいった対象としての男性と見たことは無かったけれど、今はもう変わってしまった。
何も言ってくれない竜崎を気付けば視線が追いその度に胸が苦しくなる。
あんなことが無ければ純粋な、淡く朧げな恋でいられたのに。
(何て不毛なんだろう)
もう三日竜崎があのことについて触れないということは、彼はきっと本気じゃなかったのだろう。
仕事で竜崎と接する時は公私混同しないよう努力したが、目だけは合わせられなかった。
勝手に人を陥落させ気持ちを変化させておいて何も言わず態度も変えない竜崎に腹は立ったが、それよりも自分が一夜だけの為に使われ
たのかもしれないと思うと悲しかった。
報われない恋も、あんな告白も、しなければ良かった。
全部自分が悪かったのだ。
「竜崎さん、頼まれた資料此処に置きますね」
俯いて顔を見ないようにしながら彼の横に資料を置く。
足早に去ろうとした時だ。
素早く腕が伸びてきての手首を捕まえた。
「さん、話があります。今夜この前と同じ時間、同じ部屋でお待ちしています」
突然の切り出しに目を瞠ったに竜崎は選択を突きつける。
「来たくなければ来なくて構いません。ご自身の判断でどうぞ」
← →